test外部閲覧用(アペロレシピ)
2-1 【調理器具・ベンリナー】
2-2 【調味料・七味唐辛子】
2-3 【食品・カニカマ】
2-4 【野菜・チョロギ】
2-5 【野菜・牛蒡(ごぼう)】
2-6 【野菜・さつまいも】
2-7 【野菜・えのき茸】
2-8 【そして引越しサービスも】
1.【日本人の活躍とフランス人のコメント力】
リヨンで開催された「パテ・アン・クルート世界選手権」で日本人が三連覇し、この1月には洋菓子コンクール「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」で日本代表チームが優勝するなど嬉しい記録が相次ぐこの頃です。
「日本人の活躍には驚かない。伝統的に彼らは完璧主義で質の高い仕事を好み、フランス料理を愛し、敬意を払っている。目立とうとするのではなく、完璧さを求める。ただそれだけだ」
これはパテ・アン・クルート世界選手権の審査員の言葉としてネットで紹介されていたものですが、短いメッセージの中に特筆すべき日本人の気質、フランスへの愛があってこその活躍であることが語られていて嬉しく思うと同時に、いつもながらのフランス人のコメント力の高さには感心させられます。
2.【パリで見かける日本のお馴染み】
パリの街中で、知らぬ間に当たり前のように売り場に並ぶ日本でもお馴染みの品をいくつかご紹介しましょう。
ベンリナー(スライサー)
調理道具のスライサー「Benriner(ベンリナー)」をパリで最初に見かけてから、かれこれ20年以上は経った気がしますが、それは東京でいえば河童橋のような区域にあるプロ向け調理器具専門店でのことでした。その頃レストランの厨房を取材で訪ねると当たり前のようにベンリナーがあって、複雑な作りで扱いがちょっとややこしいフランスの伝統的スライサー “モンドリン” にはない小手先で軽々と扱える点が人気だったのでしょう。近年ではデパートの調理道具売り場や朝市の生活雑貨屋さんでも見かけるようになりましたから、日本の家庭用器具をまずプロが認め、それからフランス人の家庭に広がった嬉しい例の一つなのです。
七味唐辛子
さて、こちらはフランス人による調合で作られた七味唐辛子。 見つけたのはセレクションの良さで知られるエピスリー(生鮮以外の瓶缶もの食材の店)でした。そこではスーパーマーケットですでに当たり前に売られる醤油はあえて売り場に並べず、代わりにこのような和風オリジナル商品も販売。フランスやイタリアのアルチザン(職人)が生産する高級なオイルやヴィネガーのすぐ脇で日本の「Panko(パン粉)」や「Miso(味噌)」が売られているのですから、時代は大きく変わったものです。七味唐辛子のフランスブレンドは唐辛子、ケシの実、オレンジ、胡麻、山椒、生姜、海苔。
なるほどなるほど、独創的ですね。
カニカマ
フランスの人口は日本の約半分ですが、カニカマの消費量は日本とほぼ同じ年間5万トンとはちょっと驚きですよね。フランスで流通しているのはバルト三国の一つ、リトアニアの工場で生産されているもの。これが「Surimi(すり身)」としてフランスをはじめヨーロッパ中に輸出されています。こうして「Surimi(すり身)」の名でフランスではすっかりお馴染みのカニカマですが、日本のよくできたカニカマとは比べ物にならず、すり身の名の通りまさに棒状のかまぼこ。こちらで「Surimi(すり身)」を買おうとは思わないので売り場で足を止めることもなかった私ですが、最近ノルマンディー産のカニカマがあることに気付いたのです。それが写真のこちら。他の製品がカニ棒なら、これはかなり頑張った結果のカニ脚の形状で、かまぼこを脱した食感です。
チョロギ
さて次は生鮮野菜のお話で「チョロギ」フランス語で「Crosnes(クロヌ)」。 お正月のお節料理でしかいただくことがなかったチョロギは中国原産ですが、フランスには日本から伝わったそうで、「Crosnes du Japon」とも呼ばれます。1950年代くらいまでのフランス家庭料理書ではこのレシピをけっこう見かけるのですが、その後は次第に忘れ去られ、それが最近復活して朝市や商店街の八百屋さんでも見かけるようになりました。炒めるとアーティチョークやトピナンブールのような味でポクポクとした食感です。写真はフランスのゴボウと炒め蒸し焼きしたもので、クリーム仕立てのグラタンにしても美味しいものです。
牛蒡(ごぼう)
そしてこちらは「牛蒡」フランス語で「Salsifis (サルシフィ)」。 見た目は日本のごぼうに似て一見手強そうに見えますが、日本が 『男牛蒡』 なら、こちらは 『女牛蒡』 という感じで優しい風味と食感です。こう見えて皮が薄く、皮剥きの刃がスルスル走ります。レモン汁かヴィネガーを加えた水にさらすとホワイトアスパラガスのよう。炒めてもすぐに柔らかくなりますが、ここではレモンの輪切りを加えてアクどめしながら塩茹でし、茹で汁少々にバターと砂糖少々加え、煮詰めながらグラッセしています。鴨鍋には欠かせない牛蒡ですが、日本の牛蒡のつもりで使うと風味が立たず、残念な結果になってしまうものなのです。
さつまいも
こちらのさつまいも、見た目は日本のさつまいもに似ているとも言えますが、果肉の色は見ての通り鮮やかなオレンジ色。水分が多いので火の通りが早く、スープにすればあっという間に出来上がります。ただ煮込み時間が短いということは味わいが薄っぽくなりがちで、クリームを加えても物足りなさは変わらず。どうしたものかと考え、オイルでレーズン、オレンジピール、松の実を温め、香味オイルのようにして使ってみたところ風味にアクセントが生まれ、これならばの一皿に仕上がりました。
えのき茸
そして朝市のキノコ売り場に見えるのは Enoki(えのき茸)、Shiitake(椎茸)やEryngii(エリンギ)。
日本と同じ呼び名で流通しています。
私の近著 『Mariko 食堂 ごちゃまぜパリ風レシピ』の 『鶏胸肉のソテーえのき茸のクリームソース』 では、えのき茸を細かく切ってソースのベースにしています。
そして引越しサービスも
さて最後の写真は、朝市に向かう途中で見かけた富士山とパンダのイラストで人目をひく「引越しのサカイ」の車。 「まごころこめておつきあい」のキャッチフレーズに嘘はないでしょう。だって、日本の業者さんですもの。
■上野万梨子さんのご紹介

上野万梨子
フランス料理家、1975年、パリに料理留学。翌年、ル・コルドン・ブルー パリ校卒業。帰国後、東京・玉川田園調布にてフランス料理教室「ラ・ヌーヴェル・イマージュ」を始める。1980年、初めての著書「シンプルフランス料理」(文化出版局)を上梓。当時はまだ珍しい若きスター料理研究家として活躍。1991年には活動の拠点をパリに移し、著作や食イベントの企画・編集などを通じて、日仏の食と生活文化にかかわる発信を続ける。
著書に「パリのしあわせスープ 私のフランス物語」(世界文化社)「アペロでパリをつまみぐい」(光文社)「ストウブでフランス家庭料理(世界文化社)近著に「Mariko 食堂 ごちゃまぜパリ風レシピ」(扶桑社)などがある。
Instagram: @ueno.mariko.official
<ダイニングプラスについて>
2001年創業、商社が直営する輸入食品通販サイト。日本を代表する高級ホテル、ミシュラン星付きレストランが採用する高品質な業務用食品を、どなたでも1パックから購入できます。テレビ各社や「ダンチュウ」、「エル・ジャポン」など、メディア紹介多数。