ダイニングプラスで取り扱いを開始したエゾシカ肉についてご紹介します。
エゾシカとの出会いから取り扱いに至るまで、鹿肉の美味しさを知るためにスタッフが実際に現地に赴きました。

ダイニングプラスで取り扱いを開始したエゾシカ肉についてご紹介します。
エゾシカとの出会いから取り扱いに至るまで、鹿肉の美味しさを知るためにスタッフが実際に現地に赴きました。
ある日のこと。
お世話になっているシェフから、美味しいエゾシカの賞味会をするから食べにいらっしゃい、とお誘いを受け、東京都内の素敵な並木道にあるレストランへお邪魔しました。
興味津々でレストランに到着すると、「このエゾシカは普通のエゾジカと全然ちがう!」とシェフ。それは気になるではありませんか!
この時の私は北海道のエゾジカって赤身肉で有名なジビエでしょ、というぐらいの安易な知識しかなく、その安全性や美味しさについて何も知りませんでした。
ましてや鶴居村という村の名前も知らなかったのです。
賞味会はエゾシカだけでなく、鶴居村の美味しい産品を紹介することを目的としたものでした。鶴居村、なんて美しい名前でしょう。初めて知った鶴居村は何とも魅力的な村のようです。
そしてコース料理のメイン料理として出されたのが鶴居村エゾシカのローストでした。ロースト前にはエゾシカのロース肉にエゾジカの脂を巻き付けてロール状に形を整えた状態を見せてもらい、テンションが上がります。エゾシカは野生の鹿のため脂肪が少なく、ついていてもあまり美味しくないので、使うことは稀なことだそうです。ところが、鶴居村のエゾシカは脂まで美味しい、ということでそれをあえて、巻いて使っていると。
そして目の前に出てきたお料理『鶴居村産骨付き鹿ロース肉の木の実バターロースト 栗のピュレとエスプレッソソース』
ジビエなので、しっかり焼かれていて硬いかな、という予想に反して、しっかり焼いてあるのにしっとり柔らかく、噛み応えもある身質。香ばしいナッツを砕いたトッピングとの食感の違いを楽しむこともできる。そしてエゾシカの脂を巻いてローストしているからでしょう。
では、鶴居村のエゾシカの何がそんなに違うのか?
この出会いから数カ月後、鶴居村を訪問してきました!
北海道にも春が訪れてきたころ、たんちょう釧路空港に降り立ちました。鶴居村は空港から北へ釧路湿原の西端に沿うように車で40分程度。
空から見える釧路はまだ緑が完全に芽吹く前の茶色っぽい平原という印象でしたが、鶴居村へ向かう道中には桜が咲き、新緑がまぶしく輝きだしていました。
本州とは違い、起伏が緩やかなヨーロッパ的な地形で、道の両側には木々が茂っています。道路から見ると東側の木々の向こうに釧路湿原国立公園が広がっていて、小高い場所には湿原展望台もありました。時間の関係で湿原を見ることはできなかったのですが、道中にはところどころ小川が流れていて釧路湿原を潤す水源となっているようです。
信号は縦型、道路の停止線を示す標識が高い位置にあり、雪国に来たんだなぁ、と北海道は数えるほどしか来たことのない私には旅気分が盛り上がります。鶴居村が近づいてきたことを示す標識には「鶴見台」の文字が!そうでした!ここは鶴が居る村、鶴居村なんだ! とはいえ、この時期の鶴はさらに北の方に飛んで行ってしまって、鶴見台からも見えるわけではありません(残念!)。鶴見台の近くに置かれた割とシンプルな鶴のオブジェで本物を想像して楽しみます。
その時です!
車の前に飛び出してきて、猛スピードで渡っていった動物、そうです、エゾシカでした。
春の日差しの真っ昼間、なんて無防備なんでしょう。道路を渡り切った鹿はちょっと怖かったのでしょうか、びっくりしたような少し不思議そうな顔をしてこちらをチラリと見ています。
エゾシカの工場を見に来たのですから、鹿がいるのは当然でしょうが、まさか道中のこんなに早い段階で、しかも真っ昼間に出会えるとは思ってもみませんでした。よく見ると、道中には「鹿注意!!」の標識があちらこちらに。鶴が居る鶴居村は鹿も居るんだな、と実感する瞬間でした。
釧路湿原は国立公園にも指定されている日本最大の湿原。大部分が自然な状態に保たれていて、湿原とその周辺部だけで700種以上の植物、ほ乳類39種、鳥類約200種の動物などが生命を育んでいるそうです(環境省のホームページより)。ほ乳類の代表的な存在がエゾシカです。
国立公園である釧路湿原の中では狩猟が禁止されていますから、そこで育つエゾシカはのんびりした性格です。なにしろ、いつ撃たれるかというストレスを知らずに生活しているのですから。
鶴居村は、湿原に隣接していることで、北海道の中でも1年を通して寒暖差が少なく、水もきれいだからこそ、家畜にとっても生活のしやすい場所です。
そんな鶴居村では酪農も盛んで、『乳質日本一を地域全体で支援』という取り組みもするなど、美味しい牛乳を生産しています。 つまり美味しい牧草もたくさんあるわけです。チモシー、オーチャード、シロクローバーなどの牛が好きな牧草は鹿にとっても美味しい。当然のことながら、エゾシカには国立公園の境界線はわからず、美味しい草の香りに誘われて湿原の外にまで出てきて、その美味しい草も食べて育っていくのです。
釧路湿原の自然に育まれた植物、美味しい牧草を食べ、ストレスなく育った鹿。
何だか美味しそうな予感がしますよね。
そしてもうひとつの大切な要素。それは水です。
水は人間だけでなく、動物にとっても大切です。家畜であれば、飼い主が良質な乳や肉をつくるために水の管理もしてくれますから、問題ありません。でも野生の場合、水の有無は生活の質を左右する重要なポイント。
そこで釧路湿原の登場です!湿原はその名の通り、1年を通して湿潤な土地。鶴居村やその周辺には大小の川が流れていて、水が豊富です。野生の鹿でも飲みたいときにいつでも美味しい水を飲むことができます。
人間でも新陳代謝が大切って言いますが、動物でもしっかり水を飲んでしっかり排泄している個体は良質な肉質だと言われているそうです。
鶴居村の美味しい牧草を食べにくるエゾシカは酪農家の方々にとっては迷惑な存在です。牧草を食べるだけでなく、家畜のための餌としてつくられるサイレージまでも食べてしまう鹿は、北海道に限らず各地で害獣として問題になり、捕獲して、それを活用しようという動きが活発です。
有効活用の一番良い方法は食肉として活用することでしょう。でも人間が餌を与えて、一定の環境の下で育てられた家畜と違い、野生の鹿の味わいは場所によって大きく違うと言われています。
食べ物や水の違い、ストレスの有無はとても重要でしょう。
ここでもう一つ重要なポイントは捕獲方法とお肉になるまでのスピードです。
そこで活躍するのが腕利きの猟師さんたちです。
(ここから先は少しお話がデリケートになるので、あまりお好きでない方はご遠慮いただいたほうがいいかもしれません。)
北海道ではエゾシカ肉を処理するときの衛生管理基準を作って安心安全なお肉を提供しようと、独自の認証制度を作っています。現在、道内の約20の施設が認証(2023年10月時点)されています。そのひとつが、鶴居村にある未楽来工房です。
未楽来工房は若手猟師さん4名が活躍する会社。ここでは肉の鮮度にこだわるため、「いかに鹿にストレスを与えないかが大切」と社長の中嶋さんは言います。
「うちでは銃によるクリーンキル個体だけを捕獲後30分以内に解体します。」
この一文にどれだけのこだわりが詰まっているか!
でも初めて聞いた素人の私の頭は???だらけ。。。
まず、野生動物の捕獲方法。
罠や網などを使う方法もありますが、そのような捕り方だと、捕まったとわかった瞬間から逃げようとする鹿はストレスを感じてしまします。だから、銃を使う。でも、いわゆる小さい弾が同時にたくさん出る散弾銃はお肉を傷つけることになるので使わない。
次に『クリーンキル』?? これは、鹿の頭部または頸部(首)をピンポイントで狙って撃つ方法で、体の他の部分を傷つけず、瞬間的に撃ち倒す方法のこと。例えば足に当たった場合、撃たれた鹿が逃げて走り回ると鹿がストレスを感じて、たちまち肉質が悪くなる。例えばお腹に当たって内臓を傷つけた場合、食用としては使えなくなる。
だからこそ、クリーンキルにこだわる!
未楽来工房の猟師さんは皆、300メートル先の鹿ぐらいならクリーンキルで仕留めることができる、と。。。
お話をたくさん聞いた後、外でその300メートルという距離を体感して驚き!その距離で1点をピンポイントで狙うなんて、やはりこの方たち、只者ではない!と恐れ入る私でした。
そして最後の『捕獲後30分以内の解体』
北海道では一般的に捕獲してから解体施設に搬入するまでには2時間近くかかってしまうところ、鶴居村では30分以内に搬入して解体してしまうというのです。この30分の基準というのはたくさんある解体施設の中でもダントツで、なかなかできないことなのだそう。
日の出前発砲禁止というルールがあるので、猟ができるのは日の出から日没まで。夜行性のエゾジカは夜間に鶴居村の美味しい牧草地に出てくることが多く、日の出直後が最も大切な時間です。毎日日の出の1~2時間前にはその日の天候や風の具合などを確認し、猟場を決めます。そして日の出と共に猟が始まり、捕獲したらすぐに未楽来工房に運び、その手で猟師さん自らが解体作業までしてしまうのです。
中嶋さんに「連絡をさせていただくとしたら、いつ頃がご都合いいですか?」と聞くと、「そうですね、夜明け前から仕事を始めているので、朝の8時か9時頃はちょうど一段落してゆっくりしている時間ですね~。」と。
未楽来工房の朝は早いのです。
未楽来工房のこだわりはまだあります。
せっかく美味しい資源となったエゾシカのお肉をさらに美味しくする工夫です。
お肉を部位ごとにカットして包装する部屋を訪問した時、まだ新しい業務用冷蔵庫の温度の部分に「-2」というデジタル表示を見つけました。
「これって、-2℃のことですか?」と聞くと、よくぞ見つけてくれました!という表情の中嶋さん。美味しさを向上するために取り入れた専用の冷蔵庫で、-2℃なのに肉が凍らず、熟成をかけて旨味を増すことが可能になったと言います。
いわゆる氷温熟成。この熟成庫で平均2週間ほど寝かせて旨味をアップしたのが、鶴居村、未楽来工房のエゾシカ肉です。
ご縁をいただいて訪問した鶴居村の未楽来工房さん。
皆さんもご興味をお持ちいただけましたか?
愛情のこもった美味しい鶴居村のエゾシカ肉をぜひ多くの方々にもお試しいただきたいです!
<ダイニングプラスについて>
2001年創業、商社が直営する輸入食品通販サイト。日本を代表する高級ホテル、ミシュラン星付きレストランが採用する高品質な業務用食品を、どなたでも1パックから購入できます。テレビ各社や「ダンチュウ」、「エル・ジャポン」など、メディア紹介多数。