
3 いざ、産地へ!
皆さんは普段、どんなハチミツを食べていますか?
食品を扱うお店なら大小や地域に関わりなく、どのお店でも買うことができる食品のひとつがハチミツではないでしょうか。 また、世界中どこを旅して、どの国の人とお話しても、ハチミツを食べたことのない人に出会うのは難しいのではないでしょうか。
そうなんです。ハチミツって、たくさんあるのです。
世界の食の展示会に行きはじめて20年以上。展示会に行くとハチミツを扱うブースにはたくさん出会います。
だから、よほどのハチミツでなければ、ダイニングプラスで取り扱う意味がないと思っていました。正直に言うと諦めていました。
でも出会ってしまったのです。
それはエストニアのハチミツでした。
展示会で出会った時には「美味しい濃厚なハチミツ」という印象でした。過去に取り扱っていたタスマニアのレザーウッドハチミツのような濃厚さなのに、味わいがマイルドで口どけが良く、後口がさわやか。
エストニアという国にも興味があり(バルト三国って、とても素敵なのです!)、まずはメールで商談が始まりました。
価格交渉も大切なポイントです。ベンチマークとなるハチミツの例を挙げて説明を始めると、メーカーからそんなものと比較するぐらいならうちのハチミツを買ってもらわなくてもいい、と。。。
なるほど。当時の私はまだまだ奥深いハチミツの世界を知らなかったのです。
その直後、メーカーのオーナーであり養蜂家であるピーターが今回のビジネスをしっかり理解するために来日するというので、東京で会うことになりました。
初めて会った時のピーターの印象は、体も声も大きいな、という感じでした。その後、いろんな話を重ねていくうちに、意外な繊細さや情熱を知ることになるのです。
ピーターはエストニアの豊かな自然の中で育ち、その自然の中を飛び回って花のめぐみを集める蜂たちの活動に魅せられて養蜂家になりました。養蜂家になって気づいたのはその養蜂業が危機的状況にあるという事実でした。
その大きな要因は、ハチミツという製品が分業の中で成り立っていることです。
養蜂家の手を離れて流通されるハチミツは、最終製品になるまでの間に別のものと混ぜられて販売されるケースが多いというのです。
ピーターは言います。「蜂たちが集めた美味しいハチミツを本当の美味しい状態で消費者に届けたいんだ。」 そこでピーターはハチミツのパッキング設備を作ることにしました。
自分とその仲間が集めたハチミツだけを自らの手で責任をもってパッキングする。それを叶えたのです。
叶えたのはいいけれど、買ってくれる人がいなければビジネスとして成り立ちません。
だからチャンスがありそうなところには自ら出かけて状況を知る、そんなわけで来日。
打合せ中、会食中、話は必ずハチミツのことに。。。
とにかくホンモノのハチミツを世界に広めて、養蜂家を救いたい!だからこそ、わかってくれるビジネスパートナーを世界各地に見つけて活動を広げていきたいんだ!
かくして日本のパートナーとしてピーターのパッションを広めるお役目を担った私たちなのでした。
商品を理解するためには、やはり産地を知らなければ。。。
エストニアを訪れたのは春先。長~い冬の間、息をひそめていた森がその緑を芽吹かせ、花々が一斉に開いて国全体が明るい色に満ちはじめた頃でした。
空港に着いたのはちょうどお昼ごろ。まぶしい日差しとさわやかな風、まだ寒い春の始まりです。バルト海沿いの道を少し走り、素敵なカフェでランチをとることになりました。
選んだのは小エビのサラダ。想像していたものとは少し違ったのですが、オランダなどでも人気の小エビは小さくて味が濃厚で、マヨソースにたっぷりまぶされていても味と食感を楽しめます。そして付け合わせには黒パンです。
北欧の文化圏なんだな。。。と思いながら食事を楽しみ、窓の外を眺めるとバルト海が広がってキラキラと波立っています。向こうにはフィンランド。やはり北欧です!
ランチを終えた後は、ひたすらまっすぐの美しい森林沿いを走り、メーカーの所在地に向かいます。道中の美しさに見入って、しみじみと「エストニアってきれいな国だね。」とつぶやくと、「今は1年で一番美しい季節だからだよ。1年のほとんどは暗くて寒いんだ。」と。
エストニアはバルト三国のいちばん北にある国で、海を挟んだ向かいにフィンランドがあり、伝統的にサウナを楽しむなど、北欧と文化圏が似ています。(バルト三国が北欧かどうかはいろんな議論があるようですが、国連の地域分類では北欧にあたるそうです。)
国土の約51%は森林で、沼地や湖なども豊富な土地柄。世界でも有数の空気がきれいな国ともいわれています。国立公園も多く、国をあげて豊かな自然を守ろうとしています。
私たちのハチミツが作られているのも、そんな自然の一部、ソーマ国立公園とその周辺地域です。
そこで、エストニアの冬を想像してみました。
長い夜、暗闇に包まれた森林。雪が積もり、遅い朝が来て美しい銀世界に喜ぶのも束の間、再び闇に包まれて。。。時にはどんよりとした昼間、時には吹雪にもなるでしょう。そんな中、人々はサウナで温まり、雪の大地に身を任せ、自然と気持ちも整って長い冬の楽しみ方を知る。
でも植物は?その雪の下でじっと寒さに耐えて過ごす。。。
なんて立派なの!なんてたくましいの!!
長い冬をじっと耐えて力を蓄えた植物が一斉に芽吹く春。そりゃ、エストニアの植物は力強く花を咲かせることでしょう!!
ここにもエストニアのハチミツの美味しさの秘密を見出した瞬間でした。
ピーターが車で連れていってくれる道中はずーっと同じような森林の景色ですが、その所々にピーターが巣箱を置いている場所があり、柵で囲まれています。
柵はきれいに線が張り巡らされていて、電気が流れているとのこと。
実は美味しいハチミツは熊も大好物。
日本の養蜂はスズメバチとの闘いと聞いたことがありますが、ここ、エストニアでは熊との闘いなのだそうです。ピーターは頻繁に写真付きのメッセージを送ってくれるのですが、そのうちの何度かは熊に襲われた巣箱が散乱している光景でした(涙)。
ピーターの養蜂家仲間は6人いて、美味しいハチミツづくりに協力してくれる大切な仲間です。それと共に彼らにとって大切なのは、熊退治をしてくれるハンターさん。
ピーターに仲間と一緒の写真をちょうだい、と言ったら、ハンターさんも一緒に映っていました!
ピーターとその仲間が採ったハチミツは、自分たちで責任を持ってパッキングします。
訪問した時に見せてもらったのは真新しいパッキング設備。
その建物全体を指してFactory(工場)と言ったら、間髪入れず、ピーターから修正が入りました。「ハニールームと呼んでくれ」これは工場じゃない、ハチミツが世界に巣立っていく部屋なんだ、ということです。
養蜂家ピーターは、会社の経営者ですが、心から蜂を愛し、ハチミツを愛する養蜂家なのです。
ピーターと出会って2年ほどになります。毎回話に上るのはハチミツの偽装について。
ハチミツの偽装については、過去にも問題になったことがあり、そのために偽装を見抜く特別な機械が作られたりしてきました。ところが偽装しようとする人たちはその機械をもだますことができる技術で対抗してきます。
ハチミツの規格基準には水分量やショ糖、電気伝導度などの組成基準が定められていて、この組成基準をクリアしていないものはハチミツと呼ぶことはできません。逆に言うと、基準をクリアしていれば、ハチミツと呼ぶことができます。
そして今世界で流通しているほとんどは同じような基準をクリアしていると思われます。
ところが、ピーターに言わせると、組成基準をクリアしているからと言って、100%蜂が集めてきたハチミツとは言えない、というのです。世界で流通しているハチミツの中にはハチミツに味や食感を似せたシロップを混ぜているものが多いと。。。
実は過去にも混ぜ物のあるハチミツが問題になったことがあって、偽装を見破る特別な機械まで作りだされて問題は解決したかのように見えていたものの、今ではその機械をだますことのできるものが出ていると言います。
養蜂家になったピーターは、流通しているハチミツの値段の差が大きいことに疑問を持ち、世界の養蜂家と話をするようになりました。養蜂家さん達の共通の悩みは、養蜂では食べていけない、というものでした。
安く出回るハチミツに対抗するため、本来の価格で買い取ってくれる業者が少なく、やむを得ず養蜂をやめてしまう人たちが多い。
だからこそ、ピーターは自分で採ったハチミツを自分の手で責任を持って世に出すためにパッキング設備を作ったのです。でも世界の養蜂家の方々がみんなそれをできるわけではありません。
エストニアは面積から見ても人口から見ても小さい国と言えるでしょう。そこで、いろんな産業を国として後押しするための取り組みを行なっています。
その一環としてハチミツ産業を守るために何ができるのか、という話し合いをあらゆる分野の人たちとしてきたのだそうです。
そして、2024年4月、エストニアの科学者がハチミツのDNA分析で、検体となるハチミツの真偽や産地を特定する技術を発表した、という朗報が届きました!
ハチミツにはそれぞれ偽造不可能な指紋のようなものがあり、その一部はハチミツに共通するものがあるのだそうで、それを解析することによって、混ぜ物の疑いがあるかどうかがわかるのです!
産地についても、データベースに登録されている植物生態とハチミツに含まれる植物のDNAから、産地をある程度特定することができるのだそうです!例えば、エストニア産のものはデータが多いので、国としての特定ができ、それ以外の国も地域の特性があるため、ヨーロッパ産のものにアジア産のものが含まれている疑いを確認することができる、というわけです。
〇詳細はこちら(外部サイト/英語のみ)↓
https://news.err.ee/1609314789/estonian-scientists-beekeepers-create-unique-honey-dna-test
この技術、まだ新しいものですが、ヨーロッパでは徐々に話題になりつつあります。2024年8月には、ドイツの小売り店で実際に購入された30種類のハチミツが持ち込まれ、分析されたところ、なんと80%にあたる25の製品が偽装の疑いあり、と判定されたのだそうです! さらに向かいの国フィンランドからは、56種類の製品が持ち込まれたうち、62.5%にあたる35の製品が偽装の疑い。。。 驚きの結果です。
〇ご興味のある方は、次の動画をご覧ください。↓
https://www.youtube.com/watch?v=4uQyFUQaLVs
何とも驚きの連続でした。
まだ新しい技術です。この技術は論文として出稿される準備はされているものの、まだ正式に発表されているわけではありません。
でもハチミツの業界がかかえる問題があることは感じられるのではないでしょうか。
エストニアで開発されたハチミツのDNA検査。
世界初のDNA検査済みのハチミツが日本へ輸出されました!
(会合の様子)
ダイニングプラスのエストニア産ハチミツの特徴
☆ 7人の養蜂家に限定
☆ 養蜂家自らがパッキング
☆ DNA検査済み(100%エストニア産/混ぜ物なし)
当ブログでご紹介したハチミツはコチラからお求めいただけます。
自然豊かなエストニアの厳選されたクリーミーでねっとり濃厚な百花はちみつ!原材料は「はちみつ」のみ、香り高く優しい自然の甘さ。そのままパンやヨーグルト、お料理にも。
<ダイニングプラスについて>
2001年創業、商社が直営する輸入食品通販サイト。日本を代表する高級ホテル、ミシュラン星付きレストランが採用する高品質な業務用食品を、どなたでも1パックから購入できます。テレビ各社や「ダンチュウ」、「エル・ジャポン」など、メディア紹介多数。