リゾットからアランチーノまで パスタだけじゃない’米の国‘イタリアの魅力あふれる米料理|ヒサタニミカさんのイタリアレポート
2026/02/24 12:30
米は世界の各地で愛される食材。茹でる、蒸す、炒める、煮込む。乾いたままでも、クリーミーでも、甘くてもスパイシーでも、米は味を吸い込み、多彩な表情を見せます。そのシンプルさと柔軟性は、他の食材にはない魅力です。さらに米は、単なる食材ではなく、文化や信仰、アイデンティティの象徴として、人々の暮らしに深く根付いています。
イタリアでは結婚式や収穫祭で、豊かさと幸運を願って米を撒く習慣があります。
米は幸せの象徴としてとらえられているのです。
イタリアはヨーロッパで最も米を多くする生産大国。土地ごとに個性豊かな米料理が息づいています。イタリア人の年間一人当たりのパスタ消費量は約23~25kgに対し、米はわずか3~5kg、パスタの5分の1あるいは6分の1ほどに過ぎません。それでも郷土色あふれる米料理は大切に受け継がれています。
最近ではグルテンフリーの観点から、パスタより米を選ぶ人も増え、スーパーにはさまざまなメーカーの米が並んでいます。日本ではもちもちとした甘みのあるご飯が好まれますが、イタリアではアルデンテでやや固めに仕上げるのが一般的です。わたしは日本の米で育ちながらも、イタリアの米料理の奥深さと味わいの豊かさにいつも感動します。北イタリアのリゾットはもちろん、ローマの伝統的な米料理も日常的にいただきます。
【イタリアにある米の名産地】
イタリアの米の約90%は北イタリアの平野で生産されています。
ピエモンテ州、ロンバルディア州、ヴェネト州が三大産地。それぞれの土地に適した品種が栽培されています。
米は水田で栽培するため、温暖で雨が安定している気候が向いています。
一方、南イタリアは暑く乾燥しやすく、川や雨の量も不安定なため、米より小麦やオリーブなど乾燥に強い作物が中心になります。
【米の種類】

(写真:カルナローリ米)
数種類の品種が栽培されていますが、どのイタリア米も日本で栽培される"ジャポニカ米"と比べ、
デンプンが少なく、長く煮てもモチモチしすぎることなく粒感をしっかり残した食感になるのが共通点です。
◆Carnaroli(カルナローリ)
粒が大きく、芯がしっかりしている。
煮崩れしにくく、粘りとデンプンのバランスも良いため、長時間の加熱でも形が崩れず粒が立ちながらクリーミーな仕上がりに。
シェフからは「米の王様」と呼ばれることもあり、リゾットに最適です。
◆Arborio(アルボリオ)
粒は中~大でデンプンが多く粘りが強い。
カルナローリよりやや煮崩れしやすいですが、家庭で作るリゾットには最適。
スーパーでも手に入りやすい、定番のリゾット米です。
◆Vialone Nano IGP(ヴィアローネ・ナーノ IGP)
粒は小さめで丸く、芯がしっかりしている。水分をよく吸収し、短時間でクリーミーに仕上がります。
ヴェネト州の名産で、IGPにより産地と品質が保証されています。
アルデンテの仕上がりに向き、味がしっかりと米に馴染みます。
【米を使った各地の郷土料理】
ではこのようなしっかりとした粒感が感じられるアルデンテのイタリア米からどのような料理ができるのでしょうか。
いくつか代表的な米料理をご紹介しましょう。
◆Pomodori al Riso(ポモドーリ・アル・リーゾ)
くり抜いた完熟トマトに生米、ハーブ、チーズ、オリーブオイルを詰めてオーブンで焼きます。
トマトの酸味と甘味が米に染み込み、ジューシーで香り高い南イタリアの家庭料理です。
ローマでもよく食べられ、夏の旬のトマトを使うので、冷ましてサラダ感覚で食べるのが一般的。
海水浴やピクニックの”お弁当”としても人気です。
◆Risotto(リゾット)
米をスープやワインで少しずつ煮込み、最後にバターやチーズで仕上げるクリーミーな米料理。
北イタリア、特にロンバルディアやヴェネトの象徴的な料理で、アルデンテの芯と濃厚なクリーム感のバランスが重視されます。
家庭では「ハレの日の料理」という位置づけで、出来立てを熱々でいただくのが基本です。
リゾットを作っているところを見るたびに、わたしはリゾットは「米料理」ではなく、「チーズ料理」ではないかと思うほど、仕上げにたっぷりとパルミッジャーノチーズを入れます。
◆Riso al Salto(リーゾ・アル・サルト)
リゾットの残りを油やバターでフライパンに押し付けて焼く料理。外はカリッと、中はもちっと仕上がります。
リゾットの旨味が凝縮され、表面の香ばしさと中のクリーミーさの対比が楽しい一品。
ローマや南イタリアではあまり見かけませんが、ミラノでは、よく伝統的なトラットリアのメニューに残っています。
わたしはミラノに行くと必ず食べるのですが、日本のご飯のおこげを思い出す味わいで大好きな料理です。
◆Risi e Bisi(リージ・エ・ビージ)
ヴェネト州(ヴェネツィア周辺)の春の定番料理。新鮮なエンドウ豆と米をスープで煮込むのですが、リゾットとの違いは、ごく少量のバターとパルミジャーノで仕上げるところ。
リゾットとスープの中間のような、あっさりとした米料理で、ちょっと日本の雑炊に似ています。
豆の甘味と米のおいしさをほっこり味わう、そんな一品です。
◆Tiella Pugliese(ティエッラ・プーリエーゼ)
プーリア州の家庭料理。米、ジャガイモ、ムール貝を層に重ね、オリーブオイルとハーブで焼き上げます。
海の香りを吸った米とほくほくのジャガイモ、地元のオリーブオイルが一体となり、南イタリアらしい味わいに。
わたしは数年前、プーリアの海岸の街で初めて食べたとき、材料の組み合わせの意外さ、素朴なのに想像を超えるおいしさに衝撃を受けました。
その昔、小麦に課せられた税金を避け、米やジャガイモを上手に使って作ったという南イタリアのマンマの料理の知恵が詰まっています。
◆Suppli(スップリ)
ラツィオ州(ローマ)のライスコロッケ。リゾットを小さな丸型にし、中にモッツァレッラを入れてパン粉をまぶして揚げます。
外はカリッと香ばしく、中のチーズはとろりと伸びます。
子どもから大人まで楽しめる、ローマのおなじみのストリートフードです。
◆Arancino(アランチーノ)
シチリア名物のライスコロッケ。リゾット状の米に具材を詰め、パン粉をつけて揚げます。
オレンジのように丸い形が名前の由来。同じライスコロッケでもローマのスップリよりもひとまわり大きく、一個だけでおなかいっぱいになるストリートフードの王様です。
アランチーノは単なる揚げ物ではなく、シチリアの歴史と文化の縮図とも言われます。
アラブ支配時代に伝わった米文化に、スペインやフランスの影響によるラグーや揚げ物技術が融合し、さらにトマト、ナス、ピスタチオなど地中海の恵みが加わりました。
小さなライスコロッケの中に、多層的な文化が凝縮されているのです。
若者の農業離れや天候被害の影響で、イタリアでも日本と同じように米の価格はこの数年で上がっています。
さらに、リゾットのように手間ひまかけて作る料理は、忙しい家庭ではなかなか出番が減りました。
米料理を口にする機会は少なくなったものの、それでも一皿の米料理には、パスタ以上にその土地の風土や歴史、季節の香りがぎゅっと詰まっています。
まだ味わったことのない米料理も、これからもっともっと楽しみたい。
日本でもイタリアでも、米への愛情は決して尽きることがないのです。
■ヒサタニミカさんのご紹介
ヒサタニ ミカ
京都生まれ京都育ち。1996年よりローマ在住。
サントリーグループのワイン輸入商社のイタリア駐在員事務所マネージャーを経て、ワインや食材輸入業者のコンサルタント、イタリア飲食店日本開業プロジェクトのコーディネートを行う。25年以上にわたり、イタリア全国に広がる生産者やフード&ワインイヴェントを巡り、イタリア飲食界に纏わるメディアへの企画、取材、寄稿も行っている。また日本の大学への国際研修プログラムにて「イタリア食文化」の講師を務める。
AISイタリアソムリエ協会(正規コース)ソムリエ資格を取得し、現在ではイタリアで数々のワインコンクールの審査員を担う。イタリア外国人ジャーナリスト協会会員。
<ダイニングプラスについて>
2001年創業、商社が直営する輸入食品通販サイト。日本を代表する高級ホテル、ミシュラン星付きレストランが採用する高品質な業務用食品を、どなたでも1パックから購入できます。テレビ各社や「ダンチュウ」、「エル・ジャポン」など、メディア紹介多数。
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