エトレバター|上野万梨子さんのフランス生産者訪問レポート|海外食品通販サイト ダイニングプラス(公式)

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エトレバター|上野万梨子さんのフランス生産者訪問レポート

2019/12/24 09:00


数年前のこと、東京で企画したフランスバターの試食勉強会準備中に、私自身初めて知ったのがブレス産、エトレのバターでした。 フランス中のバターが集まるパリのスーパーでもまったく見かけたことがなかったバター。
フランスのAOP認定バターの二大産地と思っていた西のノルマンディーや、ボルドーの北に位置するポワトゥー・シャラントの他に、東のローヌ・アルプ地方にもこの認定を受けた優秀なバターの産地があったのでした。
フランスで3地域しかない価値あるAOP認定ながら、フランスのみならず、世界中の優れた食材が集まるパリで一般の消費者の目にはつかない希少なバター。 それはどんな環境の中で作られているのでしょう。



ブレスはAOP認定の鶏や七面鳥の産地として名高い地方。 バターを産するエトレ村は、ローヌ・アルプ地域圏アン県の県庁所在地、ブル・カン・ブレスから北に車で30分ほどのところにあり、そこから北東方向のフランシュ・コンテ、北西のブルゴーニュ双方の南に位置する、一面にのどかな牧場が広がる小さな村です。

工場から40キロ圏内にある60の農家から朝夕二回集められた生乳は直ちに製造工程に回され、ストックされた冷蔵乳や冷凍乳を混ぜていない最高品質バター、Beurre extra fin のみを生産しています。
使われるのは、フランシュ・コンテが産する、フランスでも日本でもおそらく一番人気のチーズ、コンテに主に使われるものと同じ、モンペリアルド種の牛の乳です。


(生後数週間のモンペリアルド種の仔牛です。大切に育てられ、このあと2年半ほどで初めて乳が取れるようになります。)




搾りたての牛乳はまず低温殺菌され、そこから分離させたクレーム(クリーム)には発酵を促すための乳酸菌が添加され、タンクの中で熟成させます。 この間に乳酸発酵のアロマと程よい酸味が生まれるわけですが、この工程はバターの風味を決める上で最も重要とされ、Maitre beurrier バターマイスターの管理のもとで温度、時間ともに厳密に管理されて行われます。
私たち日本人が食べ慣れているバターに比べて、フランスバターをより美味しいと感じるのは、このクレーム(クリーム)の発酵のさせ方によるところが大きいのです。
作り手によってバターの風味が異なるのは、原料乳自体の違いを除けば、この発酵段階が決めてといってよいでしょう。



この発酵クレーム(クリーム)は次いで撹拌器にかけられ、脂肪分と水分(バターミルク)に分離させます。
水はタンクの外に排出され、ほぼ水分が出切ったころ、脂肪は細かな黄色い粒状態になります。 すると、それまで水分を外に捨てていたタンクにあらためて冷水を流し込んで洗いの工程に入ります。 こうすることで、粒状態になったバターにまだ残っていた水分が、新たに加えられた水が呼び水となることで外に出てくるというわけです。 この洗いを三回繰り返し、最後に練り上げて、バターが完成します。

こうして大きな撹拌器で一度に作る量は増えても、昔ながら、農家が木桶を手で回して撹拌し、少量生産してきた手作りバターと全く同じ工程を経て出来上がるエトレのバター。
生乳をCanon 大砲と呼ばれる機械にかければものの数分でバターが出来上がる、完全オートメーション製造が主流の時代にあって今も残る、貴重な手作りバターといえるでしょう。



希少バターということで、小さな工場であろうとは想像していましたが、一度に600キロのバターができる撹拌器は一つ、その前で働く人は2~3人。工場というと機械任せのイメージですが、エトレの場合はアトリエと言うにふさわしいほどの、そこは人の目と感覚が決め手の職人仕事の場だったのでした。

工場のヤンさんの言葉が印象的です。
「今、私たちは、これまでより食事の量を減らし、そのかわり質の良いもので満たされたいと思うようになっている」と。
そのような時代にあって、ますます価値が高まるのがエトレのようなアルチザン、職人仕事であるのは間違えありません。
そして私が付け加えたいのは、より良い素材を使えば、調理はよりシンプルに、料理にかかる時間は短縮できるということです。 調理時間が短くなれば、水道ガス電気などのエネルギー資源も確実に節約できるでしょう。エトレバターのように自然環境に配慮して生まれた製品を受け取り、消費する側として、心に留めておきたいことではないでしょうか。



できたてのバターはタンポポの花のように春めいた黄色。 ほのかな甘みとノワゼット(ヘーゼルナッツ)を思わせる風味、そして空気を含んだような口当たりの軽さも魅力的です。 これはやはり、いきなり炒め物などの調理に使わずに、まずはシンプルにパンに、ぬるのではなく、塊をのせて、バター自体を食べて味わっていただくのが一番でしょう。

文・上野万梨子さん


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