今年もまた急に夏がやってきました。
この数年、突然に季節が変わるのは日本もイタリアも同じ。
そして夏の風物詩ともいえる、あの一品があちこちで見られるようになりました。
日本で冷や麦や冷麺のように、イタリアでも暑い時期に食べる夏の定番料理があります。それは『パスタ・フレッダ』。パスタのサラダです。

(ルーコラとツナ、モッツァレラチーズ、オリーブの実の塩漬け、ミニトマトで和えたもの。パスタは「ジッリ」。)
スーパーやテイクアウトのお惣菜屋さんでもパスタ・フレッダやクスクスのサラダなど出来合いのものが売っていて、トラットリアのメニューにもでてきます。
具材はトマトやグリルした野菜、モッツァレラチーズやオリーブの塩漬けなどのスタンダードなものからペーストを絡めたクリーミーなもの、またはムール貝やイカなどの豪華魚介版もあり、そのバリエーションは限りなく存在します。唯一共通するのは、ショートパスタを使うこと。リガトーニやファルファッレ(蝶々の形)、フジッリなどが一般的。スパゲティのようなロングパスタは時間が経つと伸びて食感を損なうため、アル・デンテを重視するイタリアでは短いパスタが好まれます。地元のスーパーや食材店では夏の時期になるとショートパスタの販売コーナーがどーんと増えるほど。パスタ・フレッダは、熱いパスタ料理とは異なり、作ってからしばらく置いた方がおいしくなるので、お弁当に最適。海水浴、ピクニック、またはパーティーやビュッフェによく登場します。
【パスタ・フレッダの冷やし方】

(パプリカ、バジリコ、ツナ、ケイパーとチャイブで和えたもの。パスタは「リガトーニ」。)
初めておいしいパスタサラダを食べた時「パスタは茹でた後、どうやって冷やすのだろう」という疑問を持ちました。そうめんのように、麺を氷水でジャージャー洗いながら冷やすのかな?などと想像していました。
一般的には茹でて常温まで冷まし、その後冷蔵庫に入れるという方法。水道水で洗いながら冷やすとパスタを包んでいるデンプン層を取り除き、風味を低下させてしまうため、茹でたパスタはバットに広げ、パスタ同士がくっつかないようにすぐにオリーブオイルと和えておきます。常温まで冷めたところで具材と混ぜ合わせます。作り立てより数時間おいた方が断然おいしく仕上がります。もちろん翌日でも十分いただけます。食べるときはそうめんのように冷たくするのではなく常温です。
熱いパスタももちろん好きですが、パスタサラダはさっぱりとライトで食べやすいので、ついつい大量に食べてしまいます。
パスタ・フレッダのバリエーションに、パスタの代わりに麦やクスクス、米を使ったものもあります。具材はパスタサラダと同じものを使います。これらも冷蔵庫の余り野菜やツナ缶があれば簡単にできます。
【ファッロのサラダ】

(右写真:炒めたズッキーニと紫たまねぎ、生のミニトマト、ケイパーを具材に合わせ、オリーブオイルと塩で味を調えリコッタサラータチーズをかけたもの。)
‘ファッロ’と呼ばれる麦は、紀元前1万年前後から古代民族が栽培していたという記録がある最も古い穀物。小麦よりはるか昔に食されていました。ファッロはウンブリア州やトスカーナ州などの中部イタリアが名産地。グルテンの含有量が比較的少なく、消化がよく腸の働きを調える効果があり、暑い季節のサラダには最適な食材。パスタよりライトで、プリプリとした独特の歯ごたえがあります。ファッロも茹でてから、具材を合わせて冷蔵庫で冷やします。仕上げにチーズをかけるとより風味が増します。お好みでレモンをしぼってもいいですね。
ファッロのサラダは、わたしは暑すぎてあまり食欲がない時などによく作ります。冷蔵庫で2~3日は持つので、多めに仕込んで作り置きにします。
【クスクスのサラダ】

(右写真:炒めた鶏胸肉とニンジン、グリンピース添え。)
夏の料理としてクスクスのサラダもまたおいしいものです。クスクスは北アフリカや中東料理のイメージをもっている人も少なくありませんが、シチリアの郷土料理でもあります。実際、毎年9月末にはシチリア北部のサン・ヴィ―ト・ロ・カーポというトラパニの近くの海岸の村で世界的なクスクス・フェスティバルが開催されます。
シチリアではクスクスはプリモピアット(※)の一つとして存在し、煮込んだ魚介類を使ったソースと食べるのが一般的です。
このクスクス、夏の時期にはサラダとして食します。パスタ・フレッダと同様に、具材はお好みで。乾燥クスクスが食材店やスーパーで販売されているので家庭でも簡単に作れます。パスタと同じデュラム小麦からできているクスクスは、粒を1mm程度に小さくしたもの。調理法は沸騰したお湯とほぼ同量のクスクスを入れて数分間蒸すだけ。時短料理としても活躍するレシピです。野菜に加え、ミントやバジリコなどハーブを入れると味わいにアクセントが出てさらにおいしくなります。そして良質のオリーブオイルをたっぷり使うこともおいしさの秘訣。
パスタ・フレッダにファッロのサラダ、どれも素朴で飽きのこない料理でリピート間違いなし。
きりっと冷えた泡スプマンテも用意して、今年も暑い夏を乗り越えたいですね。
※プリモピアット
イタリアの伝統的な食卓のメニュー構成は下記のようになっています。
「前菜、プリモピアット、セコンドピアット、コントルノ、デザート」
プリモピアットは、イタリア語で’第一の皿’という意味でパスタやリゾットなどをさします。
セコンドピアットは’第二の皿’で魚や肉料理、コントルノは付け合わせ野菜。
近年では家庭ではワンプレートで食事を済ます人も多いですが
トラットリアやレストランのメニュー構成はこのようになっています。
例えばローマだとプリモピアットはパスタやリゾットになりますが、ヴェネト州に
行くとここにポレンタが入りますし、パレルモに行くとここにクスクスが入るというわけです。
■ヒサタニミカさんのご紹介
ヒサタニ ミカ
京都生まれ京都育ち。1996年よりローマ在住。
サントリーグループのワイン輸入商社のイタリア駐在員事務所マネージャーを経て、ワインや食材輸入業者のコンサルタント、イタリア飲食店日本開業プロジェクトのコーディネートを行う。25年以上にわたり、イタリア全国に広がる生産者やフード&ワインイヴェントを巡り、イタリア飲食界に纏わるメディアへの企画、取材、寄稿も行っている。また日本の大学への国際研修プログラムにて「イタリア食文化」の講師を務める。
AISイタリアソムリエ協会(正規コース)ソムリエ資格を取得し、現在ではイタリアで数々のワインコンクールの審査員を担う。イタリア外国人ジャーナリスト協会会員。
ダイニングプラスの食品
ここからは、ダイニングプラスで取り扱っているショートパスタをご紹介します。
リガトーニ (ショートパスタ) もちもち 生パスタ 冷凍
北米産、厳選デュラム小麦を使用した国内製造の生パスタ。表面の縦筋にソースがよく絡む円筒形。
カサレッチェ(ショートパスタ) もちもち 生パスタ 冷凍
北米産、厳選デュラム小麦を使用した国内製造の生パスタ。2本が寄り添い合うような愛らしい形のショートパスタ。
<ダイニングプラスについて>
2001年創業、商社が直営する輸入食品通販サイト。日本を代表する高級ホテル、ミシュラン星付きレストランが採用する高品質な業務用食品を、どなたでも1パックから購入できます。テレビ各社や「ダンチュウ」、「エル・ジャポン」など、メディア紹介多数。
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