塩と水の料理 Pot-au-feu ポトフ|上野万梨子さんのフランスレポート|海外食品通販サイト ダイニングプラス(公式)

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塩と水の料理 Pot-au-feu ポトフ|上野万梨子さんのフランスレポート

2022/11/04 09:30

フランス家庭料理とは?そう言われて真っ先に思うのはポトフではないでしょうか。 でも実際のところどんな料理なのか、鍋の中で肉が煮えているイメージはあっても、食べた経験はない人がほとんどでしょう。 レストランでサービスされるような見た目も味わいも繊細なフランス料理、あるいは身体を使って味わうがごとくドンとボリュームたっぷりのビストロ料理の方が日本人には身近な存在です。



Pot-au-feu ポトフ とは

本棚

Pot-au-feuとは“火にかかった鍋”という意味で、その名の通り肉と野菜を大鍋に長時間かけて作る料理です。茹で上がった肉に塩やマスタードをつけて食べ、茹で汁から生まれる濃厚なブイヨンはそれとは別に楽しむ、とてもシンプルなものです。写真の食器棚に並んで見えているのは主に1930年代以降にフランスで出版されたレシピブックや料理辞典ですが、これ以外の私の家庭料理書コレクションのどれにも必ず載っているのがポトフです。

作り方はいたって簡単。基本は牛肉とブーケガルニ、にんじん、セロリ、ポロネギ、たまねぎといった香味野菜に水と粗塩、粒胡椒を加えて茹でるだけ。大切なのは塩で、大鍋に肉と香味野菜を入れたら計量しながら水を加え、その3%にあたる粗塩を割り出して加えますが、この塩に何を使うかは重要です。



ポトフに使う「フランスの塩」

フランスの塩

写真で見えているのは、フランスはブルターニュ地方、ゲランドの海塩です。地中海の白い塩に比べると色は緑がかった灰色で、塩気は甘みを帯びて穏やかです。これは海水に含まれるヨウ素やミネラルによるもので、それらのいわば“雑味”は旨味となり、料理に塩辛さ以上のものを与えてくれるのがポイント。ザラっとした結晶塩―セル・グロ(写真)は、ポトフに限らず煮込みに、また野菜の下茹でやパスタを茹でる際に使い、これを乾燥させて細かくしたセル・ファンは素材の下味付けや料理の仕上げで味の調整に用います。日本の海の塩は混じり気のないクリアな塩気が特徴で、味醂や砂糖の甘みとともに使う日本料理には向きますが、フランス料理には旨味や甘みが強いフランスの塩を使った方が断然美味しく出来上がります。



ポトフの調理法

ポトフの調理法1

長時間の煮込みになるので、丁寧にこうして鍋底に肉が接しないように紐で縛って、木ベラにぶら下げて火にかけます。といって、いつもこんなふうに丁寧にできるわけでもありませんけれどね、煮汁が対流する中でこうして肉にゆっくり火を通すのはポトフには最も適した調理法なのです。
牛肉の部位は筋肉の脛、脂身の腹、赤身に多少脂がある肩ロース、そしてテールなど、質の違う部位からできれば2~3種を使います。 ここで見えている野菜は香味用で、風味のために使いきったら取り除き、最後の1時間くらいになったらガルニチュールにする野菜を加え、少なくとも合計3時間は煮込みます。じゃがいもはせっかくのブイヨンの味を芋くさくさせるので別茹でにして、最後に鍋の中で温めるだけです。

ポトフの調理法2

出来上がったら、できれば一晩は寝かせてからいただきたいものです。深皿や写真のような浅鍋に盛り付け、肉の表面を乾かさない程度のブイヨンをかけて。中央上に見えるのは牛の骨髄で、これは仕上がり間近の鍋に入れて15分ほど茹でたものです。



ポトフに欠かせないのが「牛の骨髄」

牛の骨髄

フランス人にとってこの骨髄はポトフには絶対に欠かせないもので、モカスプーンで髄を取り出して田舎パンにのせ、胡椒を散らしておつまみ的にいただくのです。日本のお肉屋さんで骨髄は買えませんから、これは旅先のフランスで機会があれば是非試していただきたいものです。



お楽しみのリメイク料理

リメイク料理1

ポトフをひと鍋作ったら、お楽しみは翌日以降のリメイク料理です。残ったら小鍋に移し替えて冷蔵庫に入れておき、次は残ったブイヨンと生クリームに刻んだハーブやピクルスを加えて濃く煮詰めたソースを添えていただくのが私流です。
ブイヨンが美味しいから、これはなかなかの味のものに仕上がります。温めなおした残り肉と小さくカットした野菜は写真のように温サラダ風に盛り付ます。

リメイク料理2

そして最後の最後に残ったブイヨンはパンに染み込ませて、削ったエメンタールかグリュイエールをのせてオーブンでグラチネに。オニオンスープが作れるほどのブイヨンが残っていなくても、こうして最後まで貴重なブイヨンを使い切ります。

フランス家庭料理を代表するといってよいポトフとは、このようにしてつくられ、楽しむものです。そしてポトフは水で肉を煮るだけの単純な料理ですが、決め手はまさに塩であり、香味野菜。日本の家庭料理に出汁は欠かせませんが、フランス家庭料理の基本は塩と水と野菜であることがおわかりいただけたことと思います。



ポトフの豚肉版「塩漬け豚肉で作るポテ」

塩漬け豚肉で作るポテ

ポトフの豚肉版と言えるのが塩漬け豚肉で作るポテです。フランスではプチ・サレと呼ばれる塩漬け肉を街で買い、それを水に浸けて塩抜きして作ります。写真のポテには使っていませんが、この煮上がりどきに厚切り生ベーコンやフランス各地ならではの生ソーセージを加えて食べることが多いものです。この料理もまた、塩と水の料理です。
新刊「ストウブでフランス家庭料理」(世界文化社)ではポトフとポテの作り方も紹介しています。この本ではダイニングプラスさんお取り扱いの生ソーセージやブーダンを使ったレシピも載っています。この本をきっかけに、塩と水を基本に材料を無駄なく使いこなすフランス家庭料理の魅力を知っていただければ嬉しいと思っています。




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