イタリアのクリスマス|ヒサタニミカさんのイタリアレポート|海外食品通販サイト ダイニングプラス(公式)

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イタリアのクリスマス|ヒサタニミカさんのイタリアレポート

2022/11/25 09:00

イタリアはこの夏あたりからコロナがほぼ過去のものとなり、記録的な暖かい秋が過ぎ、そして今年もまたクリスマスの季節がやってきました。



【巨大なクリスマスツリー】

毎年11月末くらいから街中がクリスマスデコレーションで彩られ、ショーウインドウを念入りにのぞきながら歩く人々の姿が見られます。こどもから大人まで、1年で1番みんなのテンションがあがるのがこの時期。そして12月8日は、わたしが住むローマの中心地、ヴェネツィア広場に30メートル以上の巨大なクリスマスツリーが立つ日です。これが見られるようになると、いよいよ本格的にクリスマスだなと実感します。
わたしはイタリアにいながら、1年で1番重要なこのイベント、それに伴う習慣を日本のお正月と重ね合わせて見てしまいます。 各家庭ではクリスマスツリーはもちろんのこと、“プレセーペ”というイエスキリスト誕生のシーンをあらわした模型を飾ります。日本人がお正月に門松を飾るように、クリスマスツリーやプレセーペを押し入れから出してきてほこりをぬぐい、家族みんなで家の中に大切に配置します。



【2日間祝うクリスマスの食事】

ノエルのお祝いは2日間に渡り行われます。まずはクリスマス前夜祭の24日、そしてイエス様の誕生日である25日です。レストランですます人もいますが、やはりイタリアはファミリー愛の強い国。家族や親せき、友人が一同に集まり、だれかの家で大きな食卓を囲んで24日はディナー、25日はランチをともにします。ここでどのファミリーと過ごすかは、毎年恒例のイタリア人の頭の痛い悩み。自分の家族と(夫婦である場合は)相手の家族とうまく調整をしなければなりません。これが夫婦喧嘩の元になるカップルのいかに多いことか!
20州あるイタリアでは、それぞれの地方によって祝い方が異なります。北イタリアでは25日のランチがクリスマスでもっとも大きなイベントとなり、24日のディナーは軽めにすまされます。南イタリアでは逆に24日のディナーがメインイベントで、25日のランチはもうすこし小規模になります。
多様な食文化を持つイタリアでは、さらにクリスマスメニューも各地それぞれ異なります。例えば、ピエモンテ州では、アンニョロッティという詰め物パスタをブロード(スープ)にうかべたもの、ミラノのロンバルディア州はうなぎのオーブン焼き、ナポリのカンパーニャ州はアサリのスパゲッティなどなど、そのバラエティは日本のお雑煮のように各地の郷土料理が反映されています。
おせち料理を年末から仕込むように、数日前からお母さんたちが買い出しから料理まで準備を始めます。人数が多く集まる家庭は、ほんとに一大仕事。
わたしの住んでいるローマは南に位置するので、24日のディナーに重きがおかれます。24日のディナーは魚料理、25日のランチは肉料理を食すのが伝統的なスタイル。
24日は肉を使った料理は口にしません。これは“クアレージマ”といって、キリスト教の断食の習わしに沿ったものです。
ローマで一般的なメニューは、前菜は生ガキに始まり、アーティチョークやズッキーニなどの野菜のフライ、パスタ料理にはツナのトマトソースのスパゲッティ、そしてメインに魚のオーブン焼きや魚介の煮込みといったところ。ワインは言うまでもなく、ここぞとばかりに銘酒が揃えられます。



【ミラノ発祥のクリスマス菓子パネットーネ】

ディナーが終わると、待ってました!クリスマスの食卓の主役ともいえるパネットーネの登場です。
パネットーネはミラノ発祥のお菓子。なんと1200年代には食されていたという記録がある歴史の長いスイーツです。大きなドーム型のパンケーキで、小麦粉に卵とたっぷりのバター、イーストを混ぜ合わせてこね、柑橘ピールの砂糖漬けや干しブドウを加えた生地を何時間も発酵させじっくり焼き上げたもの。
一見シンプルなこのケーキ、手でちぎろうとすると生地が伸びるくらいやわらかく、しっとりふわふわ。口に入れてみると柑橘とバターの風味がただよい、いくらでも食べられるおいしさです。もちろん24日のディナーだけでなく翌日のランチにも食べます。このお菓子が一年に一度だけしか食べないのが残念だと思っているのは、どうもわたしだけではないみたい。イタリア人のパネットーネのこだわりは、それはもうすごい。だれもがスイーツ評論家のようになります。

料理が得意なお母さんがいる家庭では自家製で作るところも稀にありますが、たいていがお店のものを買います。パネットーネ商戦はすでに11月から始まり、スーパーマーケットで販売されているものから有名銘菓子店のもの、高級レストランのパネットーネまでピンキリ。オンライン通販が定着した今、わざわざ地方から取り寄せる人もいます。どこのものがおいしいのか、みんな真剣そのもの。2,3種類のパネットーネがクリスマスの食卓に並ぶことも。
ちなみに“パンドーロ”というパネットーネとは少し違うお菓子も存在します。これはヴェローナのクリスマス菓子で、ドライフルーツの入っていないもの。八角形のかたちをしたパンケーキで上から粉砂糖がかけてあり、これもふんわりしっとりしてとってもおいしいです。 そしてトローネも忘れてはなりません。卵白とはちみつ、ドライフルーツを練って固めたヌガーで、棒状のものをカットしながら食べます。わたしはこれが大好きで、特にシチリアのピスタチオが入っているものがお気に入りです。これと濃いエスプレッソがよく合うんです。 
その他チョコレートなどテーブルの上があらゆるお菓子で散らかったころ、今度はクリスマスプレゼント交換がはじまります。

時計の針が夜中の12時を指したところで、イエス様の誕生を祝い食後酒で乾杯。もうこのころになると、テーブルから立ち上がれないくらいの満腹さに、不謹慎ながらも神聖な気持ちになるのがむずかしいのですが、みんな「アウグーリ!」(おめでとう)と叫びながら全員でハグをしあいます。この時にうるっと涙ぐむおばあちゃんがいたり、抱き合ったまま離れないカップルがいたり。お腹がはちきれるくらいおいしいものをたくさん食べ、エンドレスにおしゃべりをして、家族や友人と絆をわかちあう。クリスマスとはイタリア人にとって個々の心の祝祭なんだなと、いつも思います。
新型コロナに、ウクライナ侵攻、インフレ。。。もう世界の厄年という感じの2022年。今年は通年以上に愛にあふれたクリスマスになりそうです。

みなさんもよいクリスマスをお過ごしくださいね。
BUON NATALE  ブオン・ナターレ!



■ヒサタニミカさんのご紹介

ヒサタニ ミカ
京都生まれ京都育ち。1996年よりローマ在住。 サントリーグループのワイン輸入商社のイタリア駐在員事務所マネージャーを経て、ワインや食材輸入業者のコンサルタント、イタリア飲食店日本開業プロジェクトのコーディネートを行う。25年以上にわたり、イタリア全国に広がる生産者やフード&ワインイヴェントを巡り、イタリア飲食界に纏わるメディアへの企画、取材、寄稿も行っている。また日本の大学への国際研修プログラムにて「イタリア食文化」の講師を務める。 AISイタリアソムリエ協会(正規コース)ソムリエ資格を取得し、現在ではイタリアで数々のワインコンクールの審査員を担う。





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